診療内容

集団精神療法について

クリニック名の「つどい」という言葉には、さまざまな意味を込めたつもりです。
その中の一つに、私が長く関わっている「集団精神療法」があります。
平成25年には駒ヶ根市で「日本集団精神療法学会」大会が開催され、私は運営委員長を務めさせていただきました。
最近では、医療のみならず、福祉、介護、あるいは教育など、さまざまな場面にグループの力が応用されつつあります。

ところで、集団もしくはグループという言葉から、皆さんはどのようなことを連想されるでしょう?その問いに対して、多くの方から「会議」「寄り合い」「ホームルーム」といった答えが返ってきます。そして私の経験上、皆さんのそのイメージの中に「結束力」「強制」といった、どこか強い圧迫感が含まれていることが多いように感じます。

このクリニックで実践する「つどい」はそのような窮屈なものでなく、こころの問題に悩む皆さんの穏やかな助けとなることを目指しています。

まずは、この「集団精神療法」の理論的基礎を築いた一人である、アメリカの精神科医ヤーロムIrvin D. Yalomが唱える「グループが与える11の治療的因子」を、以下の通りあげてみます(武井麻子「グループという方法」より抜粋、改変)。

1.希望をもたらすこと
「ここに来るとホッとする」「なんとかやっていけそうな気がする」など、将来への希望が持てる場面を得ることができる。
2.普遍性
様々な人々と接することで「自分だけではない」という安心感が得られる。
3.情報の伝達
病気の症状や日々の生活上の困りごとへの対処法など、他のメンバーから自分に役立つ情報を得ることができる。
4.愛他主義
グループでの自分の言動が誰かの役に立ち、誰かに喜ばれることで、自分自身が必要とされている存在だと感じることができる。
5.初期の家族関係の修正的繰り返し
現実の家族と異なる許容的なグループで、受け入れがたい感情すら受け入れられる体験を通し、過去の圧倒的な感情の陰に隠されていた別の感情に気づくことができる。
6.社会適応技術の発達
安心感のあるグループのなかで、疑似的な社会体験を得て成長することができる。
7.模倣行動
生活技能、対人関係などにおいて、他のメンバーが持つパターンを参考にしたり、模倣して新しい対処法を得ることができる。
8.対人学習
グループのなかで言語的あるいは非言語的コミュニケーションが健全に機能することにより、安全な対人関係が体験できる。
9.グループの凝集性
一体感の強いグループにおいて、受け入れられたという安心感によりコミュニケーションが活発化して、互いに強い影響を与えあう。
10.カタルシス
グループの中で受け入れられたと感じることで、奥底にしまっていた感情(特にネガティブな感情)に直面し、それを語ることでこころが癒されていく。
11.実存的因子
生きる意味や孤独、死などといった人生の真実について、ひとりではなくグループの中で探索することにより、次第に向き合っていけるようになる。

…いかがでしょうか?
今ひとつ「ピンとこない」かも知れません。
原文の英語をどう解釈するか、私が教えを請う先生方の間でも、いくつか議論が分かれる部分もあるぐらいです。
ただ、例えば「10.カタルシス」というのは、単純に言えば「井戸端会議」「アフター5の居酒屋」のように、集まって愚痴を言い合うことでこころが安定する…といったイメージに近いものがあります。
皆さんも、どうにもできず一人で悩んでいたことが、集まって話しているうちに楽になったり、面倒なことがどうでもよくなったりして、こころの負担が軽くなった経験もおありのことでしょう。

当クリニックで開催するさまざまな「つどい」でも、そこで何かを達成するために「頑張る」のではなく、この「つどい」の中で過ごすことにより、何かが軽くなっていくこと、楽になっていくこと、そして成長していけること…を目標としていきたいと考えています。
まずは皆さんが興味をお持ちになった「つどい」に足を運んでみてください。

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