寒さが続きます…
クリニックがある飯島町、積雪は少ないとは言え気温は上がらず、依然として雪がちらちら降っています。駐車場も含め自動車の走行には支障がないようです。
帰りに七久保を通って松川町までクルマを走らせてみました。南に向かうにつれ雪が少なくなり、伊那大島の駅前あたりは普通の冬の曇りでした。
明日がどんな天気かより、早く3月になって雪の心配が減ればいいのに…と思います。
走りながらふと、インターネットとかスマートフォンとか、我々にとって何だろうと考えました。
以前、精神科薬物治療について、本を読むぐらいしか知識を得ることが難しかった時代、私にとって薬物療法とは「こころの病に対抗するための手段のひとつ」だったように思います。診察でクスリについての話を患者さんとすることは、いわば「どうやって病気に対抗するかを考える共同作業」のように考えていました。
エビデンスについて学んだ方には釈迦に説法だと思いますが、多くの臨床医にとっては「系統的にレビューされた症例対照研究」すなわち「実際に繰り返し薬を飲む方にとって、その薬がその方の役に立っているかどうか?」が診察室で得られるそこそこ強いエビデンスとなります。つまり、診察室でクスリについて話すときには、その場で得られる最強のエビデンスをともに探す作業になっているというわけです。
最近は、診察室で「ネットにこう書いてあった」と患者さんから話されることが多くなりました。
せっかくの共同作業の機会なのに「ネットにこう書いてあった」とかいう話が出ると、誰に対して適用したのかまるでわからない「無責任な話」が持ち込まれてしまいます。たとえそれが専門家の意見であっても「批判的評価に基づかず,生理学,基礎研究,または基礎原理からの理屈に基づいた専門家の意見」という最も弱いエビデンスになります。
つまり、ネット情報を盲目的に信用すると、みすみすエビデンスレベルを下げてしまっているわけです。
もちろん、中には私も知らなかった知見をもたらしてくれることもありますが、そういう見解は残念ながらとても少ない…100件のうち5つあるかどうかだというのが経験的な印象です。
何でも医者の言うことを聞くのもいかがなものかと思いますが、医者が「クスリの飲み心地はどうですか?」と尋ねるとき、それに答えるというのは患者さんにとって医者にそこそこ強力なエビデンスを与える行為だと言えます。ひょっとすると、インターネット以前の方が患者さん本人の思いを伝えていただけた分、薬物療法が患者さんと医師との共同作業の側面が強かったと思います。
…というようなことを考えながら、再び飯島町に帰ってきました。
ドライブ中の幻想はこのぐらいにして、明日からまた普通に診療しようと思います。